CONNECT NEWS ではこれまで、塩化物イオンや粉末消火剤による腐食リスクについて取り上げてきましたが、本号では、火災で発生する有害物質の一つ「煤(すす)」が建物内に拡散することで生じる二次被害について解説します。
有害物質が付着した煤の危険性
火災が延焼する過程では、供給される酸素量や温度条件が局所的に変動するため、燃焼は安定した完全燃焼ではなく不完全燃焼となる場合が多くなります。
その結果、多量の煤(炭素粒子)が生成されるとともに、建材や設備材料などが熱分解し、さまざまな化学物質がガス状成分および固体状の燃焼残渣として生成されます。生成されたガスの大部分は外気中に拡散しますが、一部は煤に吸着し空気中を浮遊して構造物や設備機器の表面に付着します。また、固体状の燃焼残渣は現場の構造物や設備機器の表面に沈着・残留します。
これらの燃焼生成物には、塩化物や硫黄化合物など金属の腐食を促進する成分や、人体に有害な物質が含まれる場合があります。特に、有機物の不完全燃焼により生成される多環芳香族炭化水素(PAH)は、発がん性や変異原性を示す物質を含むことが知られており、煤粒子に吸着した状態で環境中に残留する可能性があります。
人の移動が汚染エリアを拡大
多くの火災現場では、建物が全焼していない場合、火元周辺から建物外周に向かって被害の程度に応じたエリアが形成され、ベルフォアでは「A:燃焼・熱損傷エリア」「B:煤・消火水汚染エリア」「C:塩化物汚染エリア」「D:無被害エリア」と区分しています。
しかし実際の現場では、C・Dエリアに対して十分な区画管理が行われず、空気の流入を遮断する措置や関係者の出入りを管理する措置が取られない場合も少なくありません。その結果、本来被害を受けていない比較的清浄な区域にも、空気の流れや作業員の靴底・衣服を介して煤が持ち込まれ、二次的な汚染が拡大することがあります。
このような汚染の拡大は、除去作業の範囲を広げるだけでなく、復旧に要する時間や費用の増加につながり、結果として事業再開の遅れを招く要因となります。
ゾーニングによる煤など拡散防止の重要性
ベルフォアでは専門的な被害調査を実施し、A~Dの各エリアを可視化した「汚染マップ」を作成します。

この「汚染マップ」は復旧計画を立案する重要な基礎資料となります。
その後、復旧作業に向けて区画設定およびゾーニング(封止措置)を行い、専用のスクラバー(排ガス処理装置)や換気装置を用いて空気中に浮遊する汚染物質の濃度を低減させます。
これにより、作業者の健康リスクの最小化と汚染の拡大防止を図ります。
具体的には、次のような管理措置を実施します。
- 汚染エリアへの出入口を限定し、ビニールシート等で封止して汚染物質の拡散を防止。
- 出入口では、防護服や靴底カバーの着脱、手洗いなどの衛生ルールを設定。
これらの措置により、汚染の拡大を抑制しながら、効率的に復旧作業を進めることが可能となります。
※ 汚染マップの記載内容や区分は、事案に応じて異なります。
火災からの復旧では機械設備や建物本体の復旧に意識が集中しがちです。しかし、火災で発生する燃焼生成物や煤には健康被害や金属腐食の原因となる成分が含まれています。早期復旧の実現には関係者の健康被害を防ぐための防護措置と煤汚染(二次被害)の拡大防止が重要な鍵となります。
万一の災害に備え、BCP(事業継続計画)には、災害復旧専門会社ベルフォアの連絡先をご記載願います。
注:弊社サービスは早期復旧を目的としたものです。保険での補償は保険会社の個別の判断となります。