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企業や工場が台風対策を実施する重要性と防災のポイント

2021年7月に発生した台風8号は、統計開始以来初めて宮城県に上陸しました。太平洋側からの上陸は、2016年8月に岩手県に上陸した台風10号以来2度目です。今後も、九州や四国に比べ雨の少ない東北地方に上陸する台風が増えれば、これまで以上に大きな被害が出るリスクも増加します。そこで重要となるのが台風対策です。今回は、台風大国である日本で、特に企業や工場が台風対策を実施する重要性や、防災のポイントをお伝えします。

地域にかかわらず想定すべき台風の被害

従来、台風は九州や四国から上陸し、東もしくは北方面に抜けていくのがよくある進路でした。鹿児島県の枕崎市や高知県の室戸岬が「台風銀座」と呼ばれるのも、それらの地域から上陸することが多かったからです。

しかし、2021年7月の台風8号、2016年8月の台風10号のように、東北地方から上陸するケースも見られるようになり、今後は太平洋側のどの地域から上陸しても不思議ではありません。

これまで台風被害の多かった九州を中心とした西日本側では、東日本に比べて台風対策も進んでいます。そのため、東日本に上陸する台風が増えれば、規模は変わらなくても被害は大きくなる可能性があるでしょう。具体的には次のような被害が考えられます。

  • 風害
    台風が上陸すると、その名が示すように風による被害も多く発生します。強風による建物の損壊のほか、屋根や看板などが風に飛ばされ、建物や人に当たって被害をおよぼす可能性もあります。

    台風が起きた際、通常は進行方向の右側で強い風が吹きやすくなりますが、通過後は風向きが反対の強い風が吹く、いわゆる吹き返しがあるため、通過前後でしばらくは注意が必要です。また、建物が多い場所では、強風や乱流が発生するいわゆる「ビル風」が起こります。局地的に至るところから強い風が吹き付けてくるリスクがあり、それが被害につながる可能性を高めています。
     
  • 高潮害
    台風の接近により、海面が異常に上昇する現象である高潮が発生すると、短時間で一気に潮位が上昇します。海岸の防波堤を越えると一気に住宅地への浸水が始まり、これに高波が加われば海岸から離れた場所であっても浸水の危険が高まります。
     
  • 高波害
    高波は台風が日本に接近した時はもちろん、はるか南海上であったとしても、台風によるうねりが高波となって日本の太平洋沿岸に伝わってくる可能性も十分にありえます。海岸付近の道路への被害に加え、前述した高潮と重なって住宅地への浸水被害をおよぼすことも少なくありません。
     
  • 水害
    台風による水害は、前述した高潮害や高波害など海からの被害のほか、大雨による被害もあります。具体的には河川の増水による氾濫(はんらん)、地表水の増加に排水が追いつかずに起こる用水路や下水溝の氾濫などが挙げられるでしょう。これらにより住宅や建物が水に浸かってしまう被害(浸水害、もしくは内水氾濫)も水害のひとつとして数えられます。

    → 水害の詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
     
  • 土砂災害
    台風による大雨で、山の斜面や急傾斜の崖、人工的な造成による斜面の地盤が緩み、突然崩れ落ちることによる被害を土砂災害と呼びます。住宅が土砂崩れの下敷きになってしまえば、全壊はもちろん、そこに住まう人の命も奪われてしまう可能性の高い危険な被害です。

過去に起きた台風事例

過去に日本を襲った台風のなかで、企業や工場に大きな被害をもたらした事例を紹介します。

台風15号の事例(2019年9月)

2019年9月9日、千葉付近に上陸した台風15号の事例です。千葉県では当時の観測史上1位となる最大瞬間風速57.5メートルを記録し、関東各地に大きな被害をもたらしました。この台風により、広範囲で長時間の停電が起こり、企業や工場での操業停止も報じられるなど、一般家庭だけではなく企業や工場にも甚大な被害が出たのです。ここでは主な被害事例を紹介します。

製鉄工場

自動車の足回り部品、タイヤ向け鋼材の半製品を製造する千葉県の製鉄所では、ガス処理に使う煙突が倒壊しました。一部浸水もあり、復旧には半年を要するほどの被害が出ました。また長期間、工場が閉鎖してしまうため、各自動車メーカーでは半製品の調達遅れが必至となり、同業他社と代替品納入の交渉をせざるをえなくなっています。

産業団地

台風15号による、高潮や高波、強風による影響は横浜市沿岸部にも出ています。横浜市金沢区では、高波で数百メートルに渡り護岸が崩れ、臨海部にある産業団地に海水が押し寄せました。そのため、港湾局では海水が流れ込まないように、破損個所に土嚢を積む応急復旧作業を行いましたが、これが1週間ほどかかる大きな被害となっています。

また、周辺の浸水は約5平方キロメートルにまで渡り、約400社の社屋約750棟が被害を受け、片付けや消毒作業で事業再開までに数か月かかった企業もありました。

台風被害を最小限に抑えるための企業防災のポイント

事前の対策をしていても、台風の規模によっては甚大な被害を受けてしまう可能性があります。そこで、台風被害を最小限に抑えるために欠かせない、企業防災のポイントを見て行きましょう。

  • BCPを怠らない
    自然災害・テロ・伝染病など不足の事態が起きた際でも事業継続を可能にするためのBCPは、台風被害を最小限に抑えるうえでも大きな効果を発揮します。平時においては余計なコストと考えてしまうかもしれませんが、万が一のことがあればその何十、何百倍もの被害が出るケースもありえます。日ごろからBCPを怠らず行っておくことが重要です。

    → BCPの詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
     
  • DRPの徹底
    BCPに比べて、DRPはあまりなじみがないという人も多いのではないでしょうか。DRPとは「Disaster Recovery Plan」の略称で、災害復旧計画と訳されます。災害によって被災したインフラを迅速に復旧させるための対策として、BCP同様に重要な施策です。「災害対策本部の設置」「状況査定」「復旧のための具体的なプラン策定」などのマニュアルをあらかじめ作成し、災害時にはすぐに行動を起こせるようにしておきましょう。

    → DRPの詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
     
  • 一定の被害を受けることを前提に対策を進める
    自然災害はときとして、想定をはるかに超える被害をもたらす可能性があります。そのため、万全の準備をしていたとしても一定の被害を受けることを前提とした対策が欠かせません。常に最悪の状況を想定した準備をしておくことが、被害を最小限に抑えるポイントでもあるのです。

災害復旧専門会社の利用が迅速な操業再開のポイント

毎年のように大きな被害をもたらす台風ですが、予報の精度も上がり事前対策を十分に行える体制も以前に比べれば整いつつあります。しかし、自然災害である以上、予報をはるかに超える被害をもたらすリスクがなくなるわけではありません。十分な防災対策を講じていても、被害に遭う可能性がゼロになるわけではないのです。そのため、被害を抑える対策だけではなく、早期に復旧させるための策も講じておく必要があるでしょう。

そこで押さえておきたいのが、災害復旧専門会社の有効活用です。被害の程度にもよりますが、自社だけですべての復旧作業を行っていては時間がかかりすぎ、操業再開が遅れてしまいます。これを避けるためには、事前の計画のなかに災害復旧専門会社の利用も含めておくことです。被害を抑える対策と復旧のための対策。このふたつを考えておくことが台風被害を最小限に抑えるためのポイントといえるでしょう。

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