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予測が難しい豪雨。企業がとるべき対策とは?

豪雨は台風に比べ風の被害が少ない分、全体の被害も台風ほどではないのではと考えてしまうかもしれません。しかし、豪雨は台風に比べ予測が難しく、対策を怠っていると台風以上の被害を受ける可能性が高いのです。特に企業では、事業継続が困難になるケースもあり、しっかりとした対策が欠かせません。今回は、豪雨が発生する原因や過去の豪雨災害の事例を紹介するとともに、企業がとるべき防災対策のポイントについてお伝えします。

豪雨とは?

豪雨にはどのようなイメージがあるでしょうか? 実は、一定の時間で○ミリ以上降れば豪雨といった明確な定義はありません。

気象庁が定める予報用語によると、豪雨は「著しい災害が発生した顕著な大雨現象」を指します。未来の天気を予測する際に使われる用語ではないので、天気予報に「大雨警報」はありますが、「豪雨警報」はありません。

豪雨は、予報や警報が発表される際に、「○○豪雨並みの大雨」といった形容で用いられ、予測されている大雨の比較対象として使われます。また、○○豪雨と命名されるのは、浸水家屋10,000棟以上がひとつの目安ですが、被害状況によってはその限りではありません。

豪雨が発生する原因

豪雨はなぜ起きるのでしょうか。その原因は、「線状降水帯」にあります。線状降水帯が発生する過程は次のとおりです。梅雨、夏の日本付近には日本の北側に発達するオホーツク海高気圧と本州付近に発達する太平洋高気圧があり、それぞれの気団の境目には前線ができます。いわゆる梅雨(秋雨)前線です。ふたつの高気圧が拮抗した状態になると、前線は消えることなく日本の上空で停滞します。そこに南方から暖かい湿った空気が流れ込み、山や気流の関係で上昇して積乱雲が発生します。

この状態が長く続くと、積乱雲は次々と発生し、線状に伸びていき、線状降水帯となるのです。線状降水帯ができた地域では大雨が数時間続き、その結果、著しい災害が起きると豪雨と呼ばれます。

なお、線状降水帯の影響で数時間にわたり同じような場所で強い雨(100ミリから数百ミリ の雨量)が降った場合を、「集中豪雨」と呼びます。線状ではなく、単独の積乱雲の発達により、数十分の短い時間に狭い範囲で数十ミリ程度の雨が降った場合は「局地的大雨」と呼びます。集中豪雨や局地的大雨を「ゲリラ豪雨」という場合もありますが、ゲリラ豪雨は俗称であり、予報用語では基本的に使われません。

過去に起きた豪雨事例

過去に発生した豪雨の事例をふたつ紹介します。

平成23年7月新潟・福島豪雨

2011年7月27日から30日にかけて、新潟県と福島県会津を中心に起こった豪雨の事例です。「平成16年7月新潟・福島豪雨」を上回る降水量で、特に28日から30日にかけては、福島県会津では多いところで700ミリ、新潟県の多いところでは600ミリを超えました。わずか3日間で7月の月降水量平年値の2倍以上を記録したのです。

主な被害状況は、新潟県・福島県で死者4名、行方不明者2名(同年9月8日17時現在)。各地で堤防の決壊や河川氾濫による住家への浸水、農地の冠水があり、複数個所での土砂災害で住家や道路、交通機関に大きな被害が出ました。公共土木施設の被害概要は、福島県だけでも会津若松管内で43億円(117件)、南会津管内で52億円(98件)など、合計で141億3,700万円(353件)となっています。

令和2年7月豪雨

2020年7月3日から31日にかけて、28日間にわたって日本付近に停滞した前線の影響により、日本各地で大きな被害が発生した豪雨の事例です。特に7月3日から8日にかけて梅雨前線が九州から東日本に停滞し、熊本県、鹿児島県、福岡県、佐賀県、長崎県、岐阜県、長野県の7県で記録的な大雨を記録しました。

その後も13日から14日かけては中国地方を中心に、27、28日は東北地方を中心に大雨を記録、各地で大きな被害が出ました。この時期の総雨量は長野県や高知県の多いところで2,000ミリ以上、ほか九州南部・北部、東海、東北地方などで24、48、72時間降水量が観測史上1位の値を超えました。

被害状況は、国が管轄する8つの河川、都道府県が管轄する194の河川で浸水被害があり、全国で約13,000ヘクタールが浸水するなど、大きな爪痕(つめあと)を残しています。

企業がとるべき対策とポイント

豪雨による被害は、2次災害も含めればかなり甚大になるケースが少なくありません。では、企業がとるべき豪雨対策にはどのようなものがあるのでしょう。

豪雨が起きる予兆を把握する

基本的には、台風時の対策と大きな違いはありません。ただし、豪雨対策で注意しなければいけないのは予測が難しい点です。台風は数日前から進路や規模がある程度予測できるため、事前の準備もしやすいでしょう。一方の豪雨は、数日前からの予測ができません。しかし、次のような気象現象が起きた際には豪雨対策を進めておく必要があります

  • 梅雨前線が停滞しているとき
  • 台風が接近、もしくは上陸したとき
  • 突然空が暗くなる、雷鳴や稲妻が起きるとき
  • 大気の状態が不安定、天気が急変するおそれがあるといった天気予報があったとき

上記の気象現象が起きたら必ずしも豪雨が発生するわけではありませんが、これらはすべて豪雨が起きる兆候です。豪雨になってからでは遅いため、兆候を把握したらできるだけ早い段階で対策を始めましょう。

豪雨の予兆があった際にとるべき対策

  • 情報収集をする
    豪雨の兆候があった際は、慌てずに情報収集に努めます。事前に担当者を任命しておき、自社や工場などのある地域に豪雨が発生するかどうかの情報収集を行いましょう。
     
  • 浸水対策を行う
    土のうや防水シート、止水パネルなどが正常に使えるかどうかの確認をしたあと、浸水の危険がある場所に設置します。また、避難経路の準備・確認、業務で使うデータのバックアップや分散保存など、万が一の際の準備を進めましょう。

    → 浸水対策の詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
     
  • 社員の安全確保
    豪雨が長引く、もしくは被害の度合いがひどくなってしまうと、自宅に帰れなくなってしまう可能性が高まります。そのため、オフィスにいる社員は交通機関が動いている間に帰宅させるようにしましょう。

豪雨被害を最小限に抑えるための対策

  • BCPを行う
    豪雨の規模にもよりますが、被害を避けられないケースも少なくありません。そこで最悪のケースを想定したうえで、事前にBCPを万全にしておきます。クラウドサービスの活用、生産拠点や資材調達の代替策の用意など、万が一に備えた準備をします。

    BCPの詳細についてはこちらの記事をご参照ください。
     
  • 豪雨に対する対策マニュアルを作成しておく
    BCPは、基本的に万が一の際に事業を継続もしくは早期復帰させるための対策です。「万が一」には豪雨や洪水も含まれますが、特定の災害専用の対策ではないため、水害時用の対策マニュアルも別途、作成しておきます。これらの対策を社員間で共有しておけば、いざというときにも慌てずに行動できるでしょう。

事前予測が難しい豪雨だからこそ事前の対策徹底が重要

豪雨とは「限られた地域に激しく降る雨」といったイメージがあるかもしれません。しかし、雨が降る地域は限定されていたとしても、そこに河川の上流域があれば、雨が降っていなくても下流域の地域に被害が出る可能性があります。そのため、自社や工場のある場所がどのような地域であるかは事前に確認しておく必要があるでしょう。

また、豪雨は台風に比べ予測が困難です。特に局地的大雨に関しては予測が難しいため、起きてからでは被害が拡大してしまうリスクが高まります。これを避けるには、自社や工場のある地域の確認に加え、対策マニュアルやBCPの策定が欠かせません。万が一と考えず、いつ起きてもおかしくないという前提で対策を講じることが、リスクの低減や、被害に遭った際の迅速な操業再開につながるのです。

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